S.typhlmurlumは細胞内寄生細菌として知られており、その防御反応にはTh1-typeのサイトカインが重要な役割を果たしている。本研究では、ワクチン株として知られているS.typhlmurlum aroAを腹腔内に感染させる系を用いた。感染の最初の部位である腹腔内のクマロファージ(Mφ)の活性化が、BALB/cを遺伝的背景とするサイトカインのIL-4およびIFN_γ遺伝子をノックアウトしたマウス(IL-4^<-/->とIFN_γ^<-/->)およびリポ多糖(LPS)に不応答性を示すBALB/lps^dマウスでどのようになるかについて検討した。BALB/cで全て生存する菌量である1×10^6cfuのを腹腔内に感染させたとき、IFN_γ^<-/->マウスは最も感受性を示し全て感染死した。次いでLPS不応答性BALB/lpsdマウスが半数以上死亡した。IL-4^<-/->マウスは対照群のBALB/cマウスと同じであった。このことから、防御反応にIFN_γ産生が重要であり、LPSで誘導される炎症反応やサイトカイン産生も重要であることが分かった。常在性腹腔Mφの食菌能も同じ傾向であった。また、感染マウスのMacl^+細胞数も抵抗性を示すBALB/cやIL-4^<-/->マウスでは多く、また、腹腔MφによるTNFαmRNAの発現やその産生においてもIFN_γ^<-/->マウスのものが最も弱かった。以上の点から、IFN_γ^<-/->マウスでは炎症反応の誘導やMφの活性化が起きにくいことが分かった。 サルモネラ感染において防御反応の主要の場となる肝臓内には、TCRα/β^<lnt>CD4^+NK1^+T細胞(NK1^+T細胞)が高率に存在する。この細胞は通常のCD4^+T細胞とは異なる新しいタイプの細胞群であり、TCRを介した刺激を受けるとIFN_γやIL-4を産生する。通常IL-4を産生しており、BCGやリステリア感染を受けると消失することが知られている。BALB/cにはNK1^+抗原が存在しないこと、また、BALB/cで対応する抗原に対する抗体がないことから、LPS応答性B10SnとLPS不応答性B10Crマウスを用いて、まず解析した。サルモネラ感染においても、B10SnマウスではIL-4産生性NK1+T細胞は減少したが、B10Crマウスでは遅延した。この遅延がIFNβ産生量によるのではないかと考え、マウス組換えIFNβを投与したが、何ら影響を認めなかった。LPS不応答性マウスではLPS以外の成分によるIL-12産生が低いために遅延したと考えられた。BALB/cを用いて対応する細胞の検索を試み、TCRα/β^<lnt>CD4^+D11a^+T細胞およびTCRα/β^<lnt>CD4^+CD44^+T細胞の減少を認めたが、完全に消失しなかった。IL-4^<-/->マウスはBALB/cと変わらなかった。IFN_γ^<-/->については研究年限内に検討できなかった。
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