研究概要 |
Candida albicansは日和見病原真菌として医学的に重要な位置を占める二形性真菌である。真菌細胞を覆う細胞壁は細胞形態に規定する骨格構造であると同時に、その成分は種々の生理活性を有し、宿主との免疫応答に重要な役割を果している。細胞壁の構造解析は医学、生物学的に重要な研究課題の一つであると考えられる。しかし、C. albicansの細胞壁は複雑に構築れているためwhole cellを用いて壁多糖の局在性を調べるには限界があった。我々はC. albicansプロトプラストの完全再生糸を確立し、壁の再生過程を電子顕微鏡学的に明らかにした。 本研究ではC. albicansプロトプラスト再生系を用いて、β-1, 3グルカンおよびキチンの分布を明らかにした。すなわち、β-1, 3グルカンの局在性はβ-1, 3グルカン構造を有する抗腫瘍剤Schizophyllanに対するモノクローナル抗体SPG1-HSと金コロイドを用いた免疫電顕法で、キチンの分布は金コロイドを標識した小麦胚芽凝集素(WGA)を用いるレクチン法で検討した。その結果、(1)調整したプロトプラストにはβ-1, 3グルカンおよびキチンの存在が認められなかった。(2)再生初期に形成されるmicrofibril構造に一致して免疫電顕、レクチン電顕法いずれでも金コロイドの標識が認められた。(3)再生後期に形成された高電子密度の壁構造には免疫電顕、レクチン電顕法いずれでも金コロイドの標識が認められなかった。以上の結果から、再生初期に形成されるmicrofibril構造はβ-1, 3グルカンおよびキチンのcomplexであること、また再生後期に形成された壁構造表面にはβ-1, 3グルカンおよびキチンは露出していない、すなわち他の成分、おそらくマンナンで覆われていることが示唆された。
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