研究概要 |
緑膿菌の多剤耐性の発現に関する薬剤排出機構についての研究を行い,次の結果を得た.(1)すでに本菌緑膿菌染色体上に同定された多剤排出オペロンの最終遺伝子生産が,本菌のNalB耐性変異によって過剰産生される外膜蛋白質OprMであることを同定し,本オペロンをmexA-mexB-oprMと命名した.(2)本菌のNfxB型耐性変異の機構を明らかにするために,NfxB変異により産生が誘導される外膜蛋白質OprJを精製し,その部分アミノ酸配列を基に,本菌染色体から第二のオペロンmexC-mexD-oprJをクローン化した.そのオペロンの塩基配列を決定し,この塩基配列から推定される遺伝子産物とmexA-mexB-oprMの産物とは,互いに高い相同性があることを明らかにした.また,(3)mexC-mexD-oprJオペロンの発現は,nfxB遺伝子の産物により制御されていることを実験的に示した.さらに,(4)mexA-mexB-oprMオペロン遺伝子の緑膿菌臨床分離株での保存性を,それらの塩基配列から設計したPCRプライマーを用いた増幅実験およびサザンハイブリダイゼーション実験により調べたところ,これらの遺伝子は臨床分離株で高度に保存されていることが分かった.そこで,本オペロンの発現を抗OprMマウス抗血清を用いたウエスタンブロット法により調べたところ,本オペロンの高発現株では,キノロン剤に対する耐性度が高いことが分かった.以上の研究から,緑膿菌の染色体には,少なくとも2つの薬剤排出オペロンが存在し,それらの発現は本菌に多剤耐性を付与することが明らかとなった.
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