研究概要 |
赤痢菌の細胞侵入性に関与するipaBCD遺伝子群の発現は2つの正の調節因子(virF,invE)によってコントロールされている。またそれらの発現は外界環境因子、例えば浸透圧、温度、pH等によって厳密に制御されている。今年度の研究において、我々は、外界pHによるipaBCDの発現機構の分子レベルでの解析を行った。ipaBCDの発現は外界pHが酸性になると抑制された。この変化が一次的にどの遺伝子の段階で起こっているのか調べたところ正の調節因子のひとつvirFの転写段階であることが明らかになった。さらに、Tn10トランスポ-ソンを用いて変異株を作成し、酸性条件でこの抑制が解除される株を選択した。分離した変異株においては、virFの発現が酸性(pH6.0)では高まり、中性(pH7.4)では逆に低下していた。この変異のTn10挿入部位をクローニングおよび塩基配列を決定することにより調べたところ、cpxA遺伝子であった。また、この変異が野生型CpxAで相補されることにより、cpxA産物がvirFのpH調節に関与していることが明らかになった。cpxAは、two-component regulatory systemのsensor familyのひとつであることから、cpxAがpH sensorとして機能していることが推定された。
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