研究概要 |
我々はC型インフルエンザウイルスM遺伝子からコードされるイオンチャネル候補蛋白である18kDaの蛋白質(CM2)を感染細胞内に検出することに成功した(J.Gen.Virol.75,3503,1994)。平成8年度までにCM2蛋白の性状解析を進めて以下の成績を得た。 1)CM2は翻訳直後は16kDaであり、これに1本の高マンノース型糖鎖が付加され18kDaに変化し、さらに糖鎖が複合型に成熟することにより22〜30kDaの分子量を持つに至る。 2)CM2は合成後間もなくS-S結合による2量体を形成し、その一部はさらにS-S結合により4量体を形成する。 3)^3H-パルミチン酸の取り込み実験から、22〜30kDaのCM2に脂肪酸の付加が認められた。 4)感染細胞から調整したミクロソーム分画を、トリプシンで処理したのちRIPにより解析すると、CM2は膜貫通ドメインによりC側の領域に対する抗体との反応性を失った。感染細胞をトリプシンで処理した後にC側の領域に対する抗体とRIPすると,消化を受けた11kDaのCM2が回収された。いずれもC側領域が細胞質ドメインを形成することを示唆する成績であり、またCM2が細胞膜表面まで輸送されることも明らかになった。 5)大量に調整した精製ウイルス蛋白を抗CM2血清を用いたWestern blot(WB)法で解析し、22〜30kDaの蛋白を検出することに成功した。さらに、精製ウイルス蛋白をN-glycanaseで処理することにより、22〜30kDaのCM2は16kDaの均一な泳動を示す蛋白として捉えられた。以上のWB法の成績からウイルス粒子上に少量のCM2蛋白を存在することが明らかになった(J.Virol.71,1997印刷中)。 現在CM2蛋白の翻訳機序を解析中であり、M遺伝子を単独でCV-1細胞及びCOS細胞で発現させると、13番めの開始コドンから翻訳されると思われるCM2蛋白が主要な翻訳産物として合成されることが今までに明らかにされた。
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