前年度で得られた抵抗性変異株は3株にすぎなかったため、本年度は、より多くの変異株を分離することを第一の目標とした。 1、33の欠損変異株ライブラリーの新たな作製 U3Hygro promoter trap (pt-) retrovirusによる挿入変異を利用して、〜1x10^4のクローンよりなる遺伝子欠損変異株ライブラリーを33独立に作製した。 2、変異株の分離 上記33のライブラリーを使って、抵抗性変異株を以下の方法で分離した。 1)小麦胚芽凝集素(WGA)耐性株を選択後、その中からインフルエンザウイルスPR8株(Flu)抵抗性変異株を18種分離した。 2)Flu感染後、HA蛋白質に対する単クローン抗体と補体の処理によりFlu感受性細胞を排除し、8種類の抵抗性変異株を得た。そのうち7株はWGA感受性で、1)で得た変異株とは異なっていた。 3)4)緑膿菌外毒素、あるいはジフテリア毒素(DT)に耐性な変異株を選択後、その中に、ウシ口内炎ウイルス(VSV)に部分抵抗性を示す変異株12種を得た。しかし、インフルエンザウイルス抵抗性変異株は見つからなかった。NDV強毒株による細胞融合に耐性な変異株はDT耐性変異株の中から、1株見い出された。 3、変異株の遺伝子解析 WGA耐性変異株から得られた1株7WR1-1を含むいくつかの株について、pt-retrovirusの挿入部位に隣接した宿主遺伝子の塩基配列を決定したが、homology検索の結果では、該当する既知遺伝子は無かった。7WR1-1の表現型は、GlcNAc Transferase I (GTI)欠損であるCHO15B(あるいはlec1)に類似していることが種々の解析により判明したため、現在、CHO細胞、15B細胞、7WR1-1からGTI遺伝子のクローニングを行い、当初期待したようにU3 Hygro retrovirusによるノックアウトによるものかを調べている。
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