研究概要 |
今回、インフルエンザおよびヘルペスウイルス感染モデルにおいて、誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible NO synthase,iNOS)の強い誘導が確認され、それぞれの感染局所(マウス肺、およびラット脳)での過剰なNO生成を電子スピン共鳴法により直接証明することができた。また、両モデルにおいて、NO合成阻害剤を投与しNOの過剰生成を抑制することにより、ウイルス感染動物の生存率の有意な改善がもたらされ、この際、宿主のウイルスに対する感染防御は全く損なわれていなかった(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:2448,1996;および論文投稿中、Virology)。一方、インフルエンザウイルス肺炎モデルにおいて、NOとO_2^-の相互作用について検討したところ、本モデルにおいてウイルスの肺内増殖によってもたらされるTh1依存性の免疫反応に伴って産生されるinterferon-γおよびtumor necrosis factor-αにより、NOとO_2^-の過剰生成がほぼ同時に誘導されることが明らかになった。また、マウス肺内において、NOとO_2^-のすみやかな反応を介してNOやO_2^-よりも化学的反応性に富むパーオキシナイトライト(ONOO^-)の生成がもたらされることを電子スピン共鳴法および免疫組織化学的解析により証明した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:2448-2453,1996)。さらに、パーオキシナイトライトの消去剤として最もすぐれているエブセレンを本モデルに投与したところ、致死率の有意な改善が認められた。以上の知見は、ウイルス感染病態においてNOやO_2^-などのフリーラジカル産生により生じるパーオキシナイトライトが、ウイルス感染病態の重要な病原因子として作用していることを示している(Proc.Soc.Exp.Biol.Med.1997,in press)。今後、NOをはじめとするフリーラジカルの生成を制御することにより、ウイルス感染病態の新しい治療法を開発することも可能であるものと思われる。
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