本研究は、インフルエンザウイルスの受容体認識特異性とウイルスの感染増殖に宿主のシアル酸分子種の違いがどのように関与しているのか、さらにシアル酸分子種の認識にヘマグルチニン分子のどの領域が重要であるかを調べることによりインフルエンザウイルスの異種動物間での伝播機構を解明することを目的とする。そこで平成7年度は、ヒトおよびウシ赤血球から精製したN-アセチルノイラミン酸とN-グリコリルノイラミン酸をそれぞれ含有する2種類の糖脂質を用いて、ヒト、ブタ、ウマおよび鳥類から分離されたA型インフルエンザウイルス(H3N2)のシアロ糖鎖結合特異性をアルキルアミン修飾HRPで標識したウイルスもしくはウイルス特異抗体を用いたTLC/Virus binding assayにより調べた。さらにインフルエンザウイルスが感染増殖する宿主の気管の粘膜細胞組織あるいは大腸の上皮細胞組織のシアル酸分子種をO DSの逆層カラムを用いた蛍光高速液体クロマトグラフィーにより分離分析した。これをもとに、それぞれのA型インフルエンザウイルスの受容体結合特異性と宿主シアル酸分子種を比較解析した。その結果、インフルエンザウイルスの感染増殖する宿主の気管の粘膜細胞組織あるいは大腸の上皮細胞組織に検出されたシアル酸分子種と同一のシアル酸を含有する糖脂質に、それぞれの宿主から分離されたウイルスが結合することがTLC/Virus binding assayにより明らかとなった。今後は、シアル酸分子種の認識に関与していると思われるヘマグルチニンのアミノ酸領域を各A型インフルエンザウイルスのアミノ酸配列の比較をもとに明らかにする計画である。
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