IE発現細胞の構築に関しては、トランスフェクション効率に問題があってまだ得られていないが、培養細胞に関する知見が多く得られた。特にトランスフェクションに適した細胞やその条件等基礎的なデータが多く得られ、今後の研究にとって大きな発展が期待できる。現在は種々のトランスフェクション法やエレクトロポレーションを試みている。また培地等でも検討の余地があり、まもなくIE発現細胞が取れる予定である。 一方、ベクターとしてのヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に関しては現在、複数領域への外来遺伝子の導入を試みている。不要領域が多く見つかれば導入できる遺伝子のサイズの上限が大きくなる可能性がある。これがうまくいけば遺伝子発現のための専用のポリメラーゼをHCMVに取り込むことによって導入遺伝子の大量発現が期待できる。さらにはポリメラーゼの発現が調整できれば最終産物の発現抑制が可能となりこの検討も行っている。これは遺伝子治療用のベクターとしての可能性をより広げるものであり今後の研究に期待がかかるところである。
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