IE1発現細胞の構築には、SV40によって不死化したHEL細胞を用いた。不死化HEL細胞の中でウイルス産生量の多い細胞株を選び出し実験に用いた。これにIE1遺伝子とマーカー遺伝子としてneo遺伝子の入ったプラスミッドをトランスフェクションし、G418でセレクションを行い数十個のコロニーを拾った。蛍光抗体法でIE1産生量の多いコロニーのセレクションを行った。得られた細胞株HIE1を用いて組換えウイルスの構築を行った。 ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)DNA1μgとIE遺伝子のエクソン4領域にlacZを挿入したプロスミッド1μgをHIE1にコートランスフェクションして、アガロースをオーバーレイした。約3週間後に出現したプラーク中Xgalで青く染まるプラークをピックアップしさらに2回プラークアイソレーションを行った。得られた組換えウイルスVMIE1についてIE1の欠損をPCRとハイブリダイゼーションで確認した。 VMIE1をMOI2でHEL細胞に感染させたところ、親株のTowne株と同様の増殖を示した。また感染細胞中には蛍光免疫染色でIE1の発現は認められなかったことから少なくともIE1はin vitroでは必要でないことが判明した。このためIE1欠損ウイルスは遺伝子治療用ベクターとしては不適格であると判断した。今後、IE2欠損ウイルス、IE1&2欠損ウイルスについても検討を行う予定である。
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