今年度の研究実績は、特に研究実施計画のうちの一つ"CMV感染によるIL-8産生能の検索"に関する研究において以下の成績が得られた。 CMV許容細胞である線維芽細胞、非許容細胞の末梢血リンパ球およびマクロファージ様細胞株・THP-1等の各種細胞を用い、LPSを対照としてCMVの感染によりIL-8が産生されるか否かを検索した。まずELISA法によるタンパクレベルでの検討では、いずれの細胞においても感染後の時間および感染ウイルス量に依存して有意な量のIL-8が産生されたが、不活化CMVでは産生されなかった。タンパク合成阻害剤であるサイクロヘキシミド存在下では、LPS刺激・CMV感染いずれにおいても産生されなかった。またNorthern blot解析により、IL-8mRNAの転写は少なくとも感染後2時間以内に起きる事が確認された。さらにCMV感染は、THP-1細胞表面にLPSリセプターとして知られるCD14抗原を誘導することが新たな知見として明らかとなった。これらの知見は、第10回ヘルペスウイルス研究会、第43回日本ウイルス学会総会およびThe fifth international cytomegalovirus conference(Stokholm)において発表された。尚、論文は現在投稿準備中である。 今後の研究の展開としては、CMVの感染シグナルがIL-8遺伝子のどの部位を活性化するのかについて明らかにしていく。具体的には、IL-8遺伝子の種々の断片をレポータープラスミドにクローニングし一時発現系にトランスフェクション後CMVを感染させ、一定時間培養後の活性化遺伝子部位をルシフェラーゼ測定系により検索する。
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