研究概要 |
当該研究期間内の研究成果としては、研究実施計画のうちの特に"サイトメガロウイルス(CMV)感染によるIL-8産生能の解析"に関する研究において以下の成績が得られた。 線維芽細胞、末梢血リンパ球およびマクロファージ様細胞株.THP-1において、CMV感染により有意にIL-8が産生されたが、不活化CMVでは産生されなかった。以後、THP-1細胞を用いIL-8産生能の解析を行った。Northern blot解析により、IL-8mRNAの発現は少なくとも感染後30分には認められ、転写は感染の極初期に起きる事が明かとなった。IL-8遺伝子上流域(-546-+44)を有するルシフェラーゼ発現ベクターを用いる一時発現系によりルシフェラーゼ活性の誘導を測定し、CMV感染に応答するIL-8遺伝子上のenhancer regionを検索した所、AP-1およびNF-kB認識配列の両方が関与している事が示された。さらにCMV感染THP-1細胞より得た核内抽出タンパク質と^<32>P標識合成オリゴマープローブを用いたゲルシフトアッセイから、CMV感染によりAP-1およびNF-kB部位に特異的に結合する核内タンパク因子の産生・増強が認められた。以上の事より、CMV感染によるIL-8産生の機序は、少なくとも転写因子の活性化がそのトリガーとして重要である事が示された。さらに、CMVは炎症反応のmodulatorとしても大事な役割を演じる可能性が示唆された。これらの成果は、第10,11回ヘルペスウイルス研究会、第43,44回日本ウイルス学会総会および6th international cytomegalovirus workshop(Alabama、1997)において発表された。尚、論文は現在投稿中である。 今後の研究の展開としては、IL-8産生および遺伝子発現にCMV遺伝子のどの部位が関与しているかを明かにしていく。CMVの前初期遺伝子(IE-1,IE-2)領域を含むプラスミドによるトランスフェクタントからRNAを得、Northern blot等によりIL-8mRNA発現検索によりCMVの関与遺伝子を調べる予定である。
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