本研究の目的は、A(H3N2)インフルエンザウイルスのHAタンパク質に対するマウスモノクローナル抗体を作製し、HA分子上のエピトープを同定する。このようなモノクローナル抗体をエピトープスキャニング法で合成したペプチドと反応させ、抗体がHAタンパク質上の連続配列エピトープをどの程度認識するかを調べ、ヒト回復期血清中の中和抗体が反応する抗原決定基と比較解析することにある。 本年度はインフルエンザウイルスA/Kamata/14/91(H3N2)に対するマウスモノクローナル抗体を作製した。8週令Balb/cマウスに精製ウイルス50ugを腹腔内に注射。2週間後に同量のウイルスを腹腔内に注射。3日後に20ugのウイルスを静脈注射した。3日後に脾臓を取り出し、マウスミエローマ細胞NS-1/1・Ag4.1と5:1に混ぜPEG1000(MERCK)を用いて細胞融合を行い、RPMI1640-HAT培地を添加。96穴wellに0.1mlずつ分注し、5%CO_2インキュベータ-で培養。約2週間後に生じたコロニーの上清をELISA法で抗体産生の有無をチェックした。抗体産生のみられたwellの細胞クローニングし、8週令のBalb/cマウスの腹腔内に注射し腹水を得た。 今後、モノクローナル抗体を流行株との反応性の違いによりグループ分けした後、各グループの代表的なモノクローナル抗体のIgGを精製し、ペルオキシダーゼを結合させ、競合実験によりグループ分けをする。連続エピトープはスポット合成法によりセルロースメンブレン上でペプチドを合成する。モノクローナル抗体と反応するペプチドを同定し、モノクローナル抗体が認識する連続配列エピトープを決定する。
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