ムンプスウイルスの感染性cDNAは現在のところ得られていない。原因がどこにあるかを究明するため、他のウイルスでcDNAからウイルスを回収する系を導入し検討を加えることにした。とりあえず麻疹ウイルスの感染性cDNAを入手しモデルシステムとして実験を進めた。麻疹ウイルスの完全長cDNAならびにヘルパー細胞293-3-46はスイスのDr.Billeterより分与を受けた。完全長cDNAとLタンパク質発現用プラスミドを293-3-46細胞にトランスフェクションしたところ、9枚のシャーレのうち5枚から麻疹ウイルスの特徴である細胞融合が検出された。これらのシャーレからウイルスを回収し蛍光抗体法、特異的プライマーを用いたPCR法、免疫沈降法により麻疹ウイルスであることを確認した。またCAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)を含むミニゲノムを完全長cDANの代わりにトランスフェクションしたところCAT活性を検出する事ができた。彼らのプロトコールに従う限り、cDNAから麻疹ウイルスが回収できたので、当研究室で行っているトランスフェクション、プラスミドの精製、CAT活性測定等は問題ないことがわかった。さらにムンプスウイルスに近縁のSV5ウイルスでcDNAから感染性ウイルスを回収したと報告があり原理的にはうまく行くはずなのでムンプスウイルスの完全長cDNA作製を目指したい。またcDNAから麻疹ウイルスを回収するシステムを導入できたのでこれを用いて麻疹ウイルスの病原性を規定する変異の同定を行う予定である。
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