研究概要 |
[目的]我々はこれまで哺乳類のPolycombグループ(PcG)遺伝子であるmel-18が、転写抑制因であり、癌抑制遺伝子としても機能することを報告してきた。さらにその標的遺伝子の一つとしてc-mycを候補に考えてきた。その細胞増殖調節機構を解明する目的で、mel-18の遺伝子導入マウスを用い、B細胞抗原リセプター(BCR)刺激による細胞周期調節機構を検討した。 [方法および結果](1)mel-18を過剰発現させたところ、c-mycの発現が抑制されると共に抗原リセプターからのシグナル伝達が抑制され、細胞周期のG1期からS期への移行の阻害が起きた。(2)細胞周期のアレストが起きている事が判明したので、その分子機構について検討した。特にG0/G1期からS期への移行に必要なサイクリン/CDK/CDKI/CAKの蛋白質の定量、CDKの活性、およびRb蛋白質のリン酸化を測定した。まずRbのリン酸化の抑制が見られた。そこでCDK2,4,6の3種類のKinase活性を測定したところ、3つとも活性の著名な低下が見られた。さらにサイクリンD2,E,CDK4,6,p19,p27の蛋白質量の低下が観察された。 [考察]免疫系細胞のレセプターを介したシグナル伝達による細胞周期調節において、mel-18は、サイクリン/CDK/CDK1/CAKなどの発現量の制御を介してRbのリン酸化を調節し、G1/S境界のRestriction-pointにおける制御に関与していることが判明した。ノックアウトマウスにおけるリンパ球の分化障害機構や、mel-18の標的遺伝子の一つであるc-mycとの関連においてさらに検討したい。
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