1)MHC結合に対するペプチド上の各アミノ酸の貢献度の測定 9アミノ酸長のランダムライブラリーを用いてマウスKb、Db、Ldについてポジショナルスキャニングを行った。その結果、各MHC分子に特徴的なアミノ酸の結合貢献度のちがいが観察された。プールシークエンス法による主要アンカー位(P2または5とP9)においては好まれるアミノ酸とそうでないアミノ酸の結合に対するエネルギー貢献度に大きな差がみられたが、P4、P6では差が少なかった。その他の位置ではアンカー位ほどではないが、アミノ酸の選択度に違いがみられ、サブアンカーとして結合に貢献していることが予想された。 2)ライブラリーの結合実験値を用いた既知のT細胞エピトープの予測 上記結合実験値を加算的に扱い、任意のペプチドについてその結合度を予測した。その結果、300〜500アミノ酸長程度の親蛋白質中に存在するペプチドのうち既知のT細胞エピトープのほとんどは上位1〜7番目にランクされ、Ldのように自然エピトープがすべて1位にあげられたものもあった。しかし、MUT1腫瘍ペプチドのように低く予想されたものもあった。このペプチドは実測でも結合はみられなかった。 3)未知のペプチドに対するMHC結合性の予測 上記の予想法を自動化するプログラムを作製した。任意の蛋白質由来のペプチド約60種について結合能を実測し、予想値と比較した。両者の間には正の相関がみられたが、一桁程度のふれのある分布をみせた。これは、各アミノ酸の貢献が完全に独立には扱いきれないことを反映するものであろう。 4)異なるMHCクラスI分子間でのペプチドレパートリー比較 任意の蛋白質中に存在するペプチドのうち、自然エピト-ブにみられるような高い結合能が予測されるものについては、MHCの対立遺伝子産物の二つ以上に同時に結合するものはまれであった。
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