1. Spa-1発現制御機構の解析:正常の静止期リンパ球が細胞増殖周期へ進入するのに伴って新たに転写誘導される遺伝子Spa-1を単離し、その構造と機能について解析した。Spa-1遺伝子は、Rasファミリーの低分子G蛋白RaplにたいするGTPase活性化を担うGAPドメイン、PEST配列ならびにロイシンジッパーを含むコイル構造等からなる130kDaの分子(p130)をコードし、生体内では主にリンパ系組織に強く発現されている。p130はmRNAとは逆に、静止期(G0)細胞で多く発現されるが細胞増殖周期への進入に伴って急速に分解されてその発現は抑制される。C末を欠くSpa-1遺伝子の導入によって同蛋白を過剰発現させると細胞周期の進行に破綻をきたすことから、Spa-1遺伝子産物は細胞周期への進入と離脱の制御に重要な働きをしていることが強く示唆された。 2.ヒトSPA-1遺伝子の単離と解析:マウスSpa-1遺伝子は、第19染色体の最もセントロメア側に位置することが明かとなった。この部位はヒトの多くの癌細胞で増幅・転座等の異常が見られる位置である第13染色体長腕に相当する。そこでヒトSPA-1cDNAを単離し、同様の解析を行った。ヒトSPA-1は、マウスSpa-1とアミノ酸レベルで90%の高い相同性を示した。これをプローブとしたゲノム解析から、ヒトSpa-1遺伝子は予想通り第13染色体長腕(11q13.3)にマップされ、ヒト細胞癌化との関連が注目された。
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