我々がすでに作製しているモノクローナル抗体(RP抗体)はB細胞表面上の約105kDaの分子(RP抗原)を認識する。この抗体は活性化シグナルをB細胞に伝達し、その結果として放射線あるいはデキサメサゾンによって惹起されるB細胞アポトーシスの阻害、さらには非常に強いB細胞増殖が誘導される。したがってこの抗体の認識する分子がシグナル伝達に関わっている可能性が強く示唆されている。この抗原を同定するために、我々はまず、RP抗体を用いてRP抗原を精製し、アミノ末端のアミノ酸配列を決定した。得られた配列をデータベースで検索したが類似の配列は全く得られず、この抗原が新規の分子であることが示唆された。 そこで本研究において、このアミノ酸配列を用いてRP抗原の遺伝子クローニングを試みた。実験計画に基づいて得られたcDNAクローンの塩基配列を決定したところ、約660個のアミノ酸がコードされていた。アミノ酸配列からRP抗原は1型膜貫通タンパクであると推定された。細胞外ドメインは約600個のアミノ酸からなり、そのほとんどが、leucine-rich repeatと呼ばれるモチーフで占められていた。このモチーフはタンパク同士の結合に関わっており、細胞接着分子、あるいはホルモンレセプターなどさまざまなタンパクで用いられている。したがってRP105の細胞外ドメインは他のタンパク、リガンドあるいはassociated proteinとの相互作用に関わっている可能性が十分に考えられる。細胞内ドメインは非常に短く、アミノ酸11個からなっていた。したがってシグナル伝達には他のタンパク(associated molecule)を必要とする可能性が考えられる。我々はこの分子にRP105という名前を付けており、今後RP105について、リガンドの検索、シグナル伝達経路の解析、ヒトRP105の同定、マウスRP105ゲノム構造の解析などを進めていく予定である。
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