本年度は抗LFA-1抗体の炎症およびアレルギー反応の対する影響を検討して以下の結果を得ることができた。 (1)T細胞依存的肝障害発症におけるLFA-1分子の役割:マウス尾静脈に10mg/Kgのpropionibacterium acnes (P. acnes)を投与、1週間後に0.3μg/マウスのLPSを静脈内投与して誘導する肝傷害はMφ依存的なものと考えられてきたが筆者らによって始めてT細胞依存的なものであることが証明された。すなわち、本肝傷害はT細胞を欠損したヌードマウスでは発症せず、ヌードマウスに正常マウスT細胞を移入した場合のみ発症した。また、P. acnes投与と同時に抗LFA-1抗体を500μg/マウス2回投与することによって、肝傷害が完全に抑制された。従って、本肝傷害にはT細胞と他の免疫担当細胞、あるいは肝実質細胞とのLFA-1分子を介した細胞間接着が重要と考えられる。 (2)アレルギー発症におけるLFA-1分子の役割:BALB/cマウスにアラムに吸着させたOVAを投与することによって10日後にはIgEの産生が認められる。しかし、OVA投与の際に、抗LFA-1抗体を投与することによって、生体内IgE産生が強く阻害され、しかも、その阻害は8週間もの長期間持続することを明らかにした。このようなマウスにおいては、OVAでの再刺激に対するリンパ球混合培養反応性の低下が認められ、IL-4の産生も低下している証拠も得られた。従って、抗LFA-1の生体内投与によってIL-4を産生するTh2細胞のOVA特異的応答性が低下(免疫寛容)し、生体内でのIgE産生が抑制されたのではないかと考えられた。
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