申請者はマウスのCD4陽性T細胞が細胞表面のCD45のalternative peptide C(CD45RC)の表現及びモノクローナル胸腺細胞傷害性自己抗体の認識するNTA260抗原の表現によって5つの表現型をもつ亜集団に分割され、それらが機能的なサブセットに対応する可能性を示した。またこれらの亜集団の構成はマウスの加齢に伴って変化すること、また(NZB×NZW)F1マウスにおいてはその構成に顕著な異常がみられることを報告した。平成7年度の成果を要約すると、その第1は、CD45RC及びNTA260抗原の表現によって分画されるCD4陽性T細胞のサブセットのそれぞれの機能的特徴について理解を深めたことである。(NZB×NZW)F1マウスで見られるCD4陽性T細胞サブセットの加齢変化がどのような機序で起きているかの問題との関連で本年度なされた第2の重要な発見は、このマウスの加齢にともなってリンパ球のホ-ミングセプター、L-sele-ctin(CD62L)に対する自己抗体が産生されることである。現在、L-selectinに対する自己抗体産生がどの程度の頻度でこのマウスにおいて見いだされるのか、CD4陽性T細胞の関与する免疫異常に関与するかはきわめて興味深い問題となっている。第3の発見は(NZB×NZW)F1マウスで見られるCD4陽性T細胞サブセットの加齢変化は、基本的にNZBマウス由来の遺伝的背景で規定されており、NZWマウス由来の遺伝子がこのプロセスを加速していることである。このマウスのCD4陽性細胞サブセット構成の異常をもたらす遺伝支配を明らかにすることは自己免疫疾患の発症機序の解明に重要な示唆を与えると考えられ、平成8年度以降の重要な課題となっている。
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