全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な自己免疫疾患のひとつであり、免疫系の異常をともなう難病である。その発症には複数の遺伝的素因に基づくCD4陽性T細胞の機能の異常が関与していると考えられている。 我々はSLEを発症する(NZB×NZW)F1マウスにおいて、加齢に伴ってCD45のalternative peptide C(CD45RC)の表現とNTA260抗原によって分画されるCD4陽性T細胞サブセット構成に著しい異常が現れることを明らかにした。 今年度は、マウスの早期活性化マーカーであるCD69とNTA204抗原のCD4陽性T細胞上での表現を指標に(NZB×NZW)F1マウスとその親系および健常BALB/CマウスでCD4陽性T細胞の活性化を検討した結果、これらの活性化マーカーを表現した細胞の頻度が自己免疫系マウスで異常に高まることを明らかにした。これら早期活性化CD4陽性T細胞中には各々CD69とNTA204を単独に表現する亜集団に加え、この両抗原を同時に表現する異常な亜集団が高率に出現していた。活性化CD69^+CD4陽性T細胞やNTA204^+CD4陽性T細胞に、特定のTCRVβレパートリーの使用頻度に偏りが生じているか否かを調べたが、これらには特定の偏りは見られなかった。これらの異常な表現型を示すCD4陽性T細胞は、そのサイトカイン産生パターンや抗原に対する応答能に関して、naive T細胞やmemory T細胞を含まない新しく認識された機能的CD4陽性T細胞亜集団であり、Th1にもTh2にも属さない細胞であった。NZBと(NZB×NZW)F1マウスでは、CD4陽性T細胞分画が加齢とともに著しくこの分画に偏るので、このような異常をもたらす遺伝子を同定する目的で(NZB×NZW)F1マウスをNZWマウスに交配し、一群のF2マウスを得た。このマウスの解析がSLEにおける自己反応性CD4陽性T細胞の性状とその発症機構の理解に重要な手がかりを与えることが期待され、現在解析を進めている。
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