SLE患者の抹消CD4陽性T細胞では高い頻度で持続的に活性化された状態にある細胞が見いだされ、このような細胞が自己免疫病態の形成に重要な役割を担っていると推察されている。しかしそのサブセット構成の偏り、活性化状態の性質、またCD4T細胞の機能異常がもたらされる遺伝的背景についての理解は進んでいない。 我々はマウスのCD4陽性T細胞において、表面マーカーとしてCD45RC(あるいはCD62L)およびNTA260抗原の表現を指標とすれば、主な4つの機能的に異なる亜集団を分画できることを示した。さらにSLEモデル、(NZB×NZW)F1マウスでは、その構成に顕著な異常が生じることを明らかにした。本研究ではこれらの研究成果に基づき、以下のような事実を明らかにした。 1.SLEモデル(NZB×NZW)F1マウスでは、マウスのCD4陽性T細胞の早期活性化マーカーであるCD69およびNTA204を表現する細胞の頻度が異常に高まる。特に(NZB×NZW)F1マウスでは加齢にともない、通常のマウスでもみられる、CD69あるいはNTA204を単独で表現した細胞に加えて、この両抗原を同時に表現する異常な亜集団が効率に出現する。 2.これらの早期活性化マーカーを表現した細胞では、TCRVβレパートリーの使用頻度に偏りは見られなかったが、これらの細胞はCD45RC(CD62L)陰性、NTA260陰性を示す独特な亜集団に属する細胞である。 3.この細胞分画はnaiveT細胞やmemoryT細胞を含まない新しく認識された機能的CD4陽性亜集団であり、またサイトカイン産生能からのTh1にもTh2にも属さない細胞である。 4.このような(NZB×NZW)F1マウスの加齢にともなう異常なCD4陽性T細胞の機能異常はNZBマウス由来の優性遺伝子に規定された現象である。 このように本研究ではSLE発症にともなうCD4T細胞のサブセット構成の異常、また機能異常の本質について重要な知見が得られたほか、その遺伝支配を明らかにしていく方法について明確な指針が得られた。現在(NZB×NZW)F1マウスをNZWマウスに退交配して一群のマウスが得られているので、平成9年以降の研究によりSLEにおけるCD4陽性T細胞の異常の本質とそれをもたらす遺伝的背景について明らかにすることができると期待でき現在さらに研究を進めている。
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