研究概要 |
myb遺伝子の発現レベルは未分化造血系細胞で高く、分化に伴い抑制される。mby遺伝子欠損マウスでは胎児肝臓での造血が正常に行なわれず致死となることなどから、myb遺伝子産物(Myb)は未分化造血系細胞の増殖に必須の役割を荷っていると考えられている。Mybは特異的DNA配列に結合する転写制御因子であり、ある種のMyb変異体は造血系細胞をがん化する。したがって細胞増殖因子からのシグナルが受容体やリン酸化酵素を経て、最終的にはMybに伝えられると考えるが、その実態は全く不明である。私達はMybの中央部位に存在するロイシンジッパー構造を介してインヒビターがMybに結合し、Mybの機能を制御していることを明らかにした。そしてロイシンジッパー構造の近傍にはDNA結合活性を抑制する制御ドメインが存在することを明らかにした。 c-myb遺伝子欠損マウスは胎児の時期に致死となり、生後マウスの各組織におけるc-mybの役割が解析できない。そこで、二段階相同組み換えを用いて、MybのDNA結合ドメインやインヒビター結合ドメイン内に点変異を導入した変異マウスの作製を試みた。これらのマウスではMyb活性が野生型の1/10または10倍になり、発生途上で致死とならず、心筋細胞等の増殖制御におけるMybの役割を検討できることが期待される。これまでにヘテロマウスを得ることができ、現在ホモ変異マウスを作製する目処をつけることができた。またB-myb遺伝子欠損マウスをES細胞における相同組み換えを用いて作製し、解析した。その結果、B-myb欠損マウスは胎児の初期発生の時期に死亡し、B-mybが初期発生に必須であることが明らかとなった。またMybの転写活性化に必要なコアクティベータ-を解析した結果、CBPがMybのコアクティベータ-として機能することが示された。CBPはCREB以外にもJun,Fos,MyoD,Stat2,核内受容体などのコアクティベータ-として機能することが最近明らかにされた。一連の解析の結果、CBPを取り合うことによりMyb活性がこれらの転写因子により阻害されることが示された。また私達は最近Mybに結合する制御因子をcDNAクローニングにより同定したが、この因子がCBPにも結合することを見い出した。したがって、この因子はMybとCBPの結合を制御することが推定された。
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