NF-IL6は、急性炎症において活性化される多くのサイトカインや急性期蛋白遺伝子の転写、マクロファージの分化や活性化に関与している。我々は、昨年度NF-IL6欠損マウスはリステリアに対して易感染性を示し、NF-IL6がマクロファージの細胞内殺菌、腫瘍障害活性、G-CSFの転写活性化に重要な転写因子であることを明らかにしてきた。 本年度はNF-IL6β欠損マウスを作製し、両者の形質変化を比較検討した。NF-IL6βは急性期蛋白の発現誘導においてNF-IL6と相乗的に作用し、特にC3とSAA-1においてはNF-IL6βが重要と考えられている。しかし、テルペン油による局所炎症の誘導においてはこれらの発現は障害されていなかった。またマクロファージにおけるサイトカイン遺伝子発現調節も、RT-PCRで見る限りG-CSFを含めて異常を認めなかった。マクロファージの細胞内殺菌や腫瘍障害活性なども障害されておらず、実際NF-IL6βはリステリアのような細胞内寄生細菌に対して感受性を示さなかった。 NF-IL6が機能を代償している可能性も否定できず、NF-IL6とNF-IL6βを同時に欠損するダブルノックアウトマウスの作製が重要と考えられるため、その樹立、解析を続けている。一方、脂肪細胞の分化においてはNF-IL6β、ついでNF-IL6、C/EBPの順に発現がみられること、また線維芽細胞のインスリンとデキサメサゾンによる脂肪細胞への分化の系でNF-IL6βを強制発現させるとこれを促進することなどから、これらのファミリー遺伝子は脂肪細胞分化に深くかかわっていると考えられる。実際、NF-IL6欠損マウスにおいては精巣上体の脂肪組織が発達せず、今後より詳細な解析を続けていく。
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