研究概要 |
ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムヒ素(InAs)および三酸化ヒ素(As_2O_3)を用いて、ラットの気管内に反復投与し、経気道性暴露による生体影響について検討した。GaAs, InAsは乳鉢で粉砕後、さらに遊星型ボールミルを用いて粉砕し、電磁式篩振とう機により分級した。走査型電子顕微鏡および画像解析装置を用いて粒径を測定し、幾何平均径はGaAs粒子1.32μm, InAs粒子1.58μmであった。SPF飼育下の12週齢雄ラット(Crj ; Wistar)47匹をGaAs群(12匹)、InAs群(12匹)、As_2O_3群(12匹)および対照群(11匹)の4群に分けた。1回投与量はGaAs 7.7mg/kg, InAs 7.7mg/kg, As_2O_3 1.3mg/kgであり、各被験物質はリン酸緩衝液に懸濁させ、ラットの気管内に投与した。投与は週2回、計16回行い、体重は各投与時に測定した。投与終了の翌日にラットをエーテル麻酔下で生殺し、後大静脈より採血した。解剖後、各主要臓器を摘出し、その重量を測定した。投与期間中の体重はGaAs群で、投与4回目から対照群と比べて有意に増加したが、他の群では有意な差は認められなかった。15回目の投与後からInAs群で体重の低下が観察された。GaAs群では肺重量が対照群と比べて有意に増加していたが、InAs群では肺、脾臓、腎臓の各臓器重量が有意に増加し、肝臓で低下していた。As_2O_3群では肝臓重量の低下が認められた。血清生化学検査では、トリグリセライドがGaAs群で対照群と比べて有意に増加し、InAs群では有意な低下が認められた。体重変化および血清生化学検査の結果から各群で毒性発現の顕著な影響は認められなかったが、InAs群で肺重量が著しく増加し、肺における障害が示唆された。
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