保健施設事業における健康・体力づくりプログラムの医療経済学的評価

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07670406
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 馬場園 明 九州大学, 健康科学センター, 助教授 (90228685)
• キーワード: 医療経済学 / 保健施設事業 / 健康・体力づくり / 健康保健組合 / 運動処方

研究概要

保健施設事業としての健康・体力づくりのプログラムの評価をおこなうには、これらのプログラムをおこないえる健康保健組合に加入している事業所を対象としなければならない。この事業所として、1531名の従業員を持つ、H県に所在し自動車のシートを生産しているD企業を設定した。まず、本人の属性、嗜好、体力、運動の状況、過去一年間の既往、職場での自覚的ストレス度、タイプA性格、家庭でのストレス度、精神の健康度、作業環境を調査した。調査の回答率は98.7%と高率であり、精神の健康度に問題のある者は35.6%であった。精神の健康度に問題のある者は、未婚で、運動量が少なく、体力に自信のない傾向があった。また、慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息、腰痛、けが、頚肩腕障害、不眠、不安の発症が高い傾向があり、職場での自覚的ストレス度、家庭での自覚的ストレス度も高い傾向にあった。職場での自覚的ストレスで精神の健康度と関連の高い項目としては、「仕事のトラブルが多い」、「上司との関係が悪い」、「技術進歩についていけない」、「精神的に疲れやすい仕事がある」があった。家庭での自覚的ストレスで精神の健康度と関連の高い項目は、「家族の健康問題」と「夫婦の意思疎通の問題」であった。今後は、まず、精神の健康度に問題があった群となかった群の医療経済学的な評価をおこなう。次に、これらの精神の健康に問題のあるハイリスクの従業員を対象に、健康・体力づくりのプログラムを実施する介入研究をおこなう。健康・体力づくりプログラムの内容としては、運動処方、リラックセーション、カウンセリングからなる。その評価の指標としては、精神の健康度、体力のみならず、医療経済学的な指標である、医療費、受診率、入院率、受診日数、入院日数も考慮する。また、どのような疾患の医療受診に影響を与えたかも評価する。プログラムの評価は、介入群と非介入群の指標の差および介入群の介入前および介入後の指標の差を比較することでおこなう。

研究成果

• [文献書誌] Babazono A, Hillman AL: "Declining Cost-Effectiveness of Screening Disease ; The Case of Gasfric Cancer in Japan" International Journal of Technology Assessment in Health Care. 11. 354-364 (1995)
• [文献書誌] Babazono A, Tsuda T, Mino, Y, Ogawa T, Aoyama H: "Optimal Screening Interval for Gastric Cancer in Japan" Journal of Epidemiology. 5. 67-74 (1995)
• [文献書誌] Mino Y, Tanaka S, Tsuda T, Babazono A, et al: "Training in Evaluation of Expressed Emotion Using the Japanese Version of Camberwell Family Intervien" Acta Psychiatrica Scanclinavia. 92. 183-186 (1995)
• [文献書誌] 佐々木千恵, 馬場園明, 津田敏秀, 三野善央: "身体活動の労働者の体力に及ぼす影響" 日本衛生学会誌. 50. 876-885 (1995)
• [文献書誌] 馬場園明: "世界の健康権" 教育と医学. 43. 4-10 (1995)
• [文献書誌] 馬場園明: "集団検診の費用効果分析に対するマルコフモデルの応用-胃癌検診の検診間隔をめぐって-" Intervison. 10. 9-9 (1995)