研究概要 |
1989-1993年和歌山県下ALS発症頻度を、1)和歌山医大神経病外来臨床記録、2)県特定疾患医療受給台帳、ならびに、3)県下100床以上の基幹病院への第一、二次調査アンケートによる病歴情報をもとに再調査した。また、多発地区古座川町と対照地区串本町大島については、1995年現地調査を行い、患者情報収集と同時に地域の河川・上水道水を採取した。 この間県内発症者は73人(平均発症年令61.8±12.2歳)、男性は53人(60.8±11.9歳)、女性は20人(64.6±13.0歳)で男女比は2.7:1であった。家族性例はなかった。県平均年間発病率は、1.36人/人口10万人で、男性2.08、女性0.71であった。3.0人/人口10万人以上の高発病率は、日高郡以南一御坊市周辺と東西牟婁地方一に見られ、古座川町9.54、熊野川町9.03が最も高率で、河川・上水道水のCa,Mg含有量の低い地域にほぼ一致した。 古座川町(人口4193人、1990年)では、この間在住発症者2人の他、同町外で4人の離村者が発症していた。在住発症者の内1名は、他郡よりの移入者で、一方、離村後発症者の内1名は家族性例であった。しかし、串本町大島(人口1667人、1990年)ではいずれの発症者もなく、過去にも患者は知られていない。水質分析では、古座川水系の河川・上水道のCa,Mg含有量(平均Ca2.5,Mg1.3ppm)は極めて低く、これに対し、大島の井戸水は(Ca17.0,Mg3.7ppm)と全国平均レベルの(Ca8.8,Mg1.9ppm)を上まわり対照的であった。しかし、1973年以後大島においても古座川が上水道の水源として使用され、発症年齢に達した在島者の長期にわたる継続観察が必要である。 今後、更に両地区のALS患者発病状況と環境・遺伝学的要因の比較研究を進めることが原因究明に重要である。
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