研究概要 |
平成元年より5年(1989-1993年)までの5年間の和歌山県下ALS発症頻度を、1)和歌山医大神経病外来臨床記録、2)県特定疾患医療受給台帳、ならびに、3)県下100床以上の基幹病院への第一、二次調査アンケートによる病歴情報をもとに調査し、現地調査による未発見者を加え、最終的に患者は77人(平均発症年令61.8±12.2歳)を認めた。男性は57人(60.8±11.9歳)、女性は20人(64.6±12.9歳)で、男女比は2.9:1であった。家族性例はなく、県平均年万発病率は、1.43人/人口10万人、男性2.23、女性0.71であった。3.0人/人口10万人以上の高発病率は、日高群以南-御坊市周辺と東西牟屡地方-に見られ、多発地古座川町は9.54と、なお最高率を示した。 一方、和歌山県における1959-1971年の死亡統計(上林ら、1971)と1985-1994年の県人口動態死亡統計により約25年間の死亡率の変化を検討した。全県過去13年間の平均年間死亡率(年齢補正)は1.04人/10万人、最近10年間は0.98と大差はなかった。地域別とは、過去の半島南部ほど死亡率が高い傾向は解消され、古座川を含む南部の死亡率低下が著しく、これに対し他地域では増加傾向を示した。平均死亡年齢は、過去の59.4歳に対し、最近は67歳と高齢化が見られた。即ち、特異な半島南部の集積発症は解消されつつあるが、全体としては死亡年齢の高齢化と死亡率の上昇傾向がみらた。 1959-1971年の和歌山県下の5地域において、平均年間死亡率とCa,Mg含有量は強い負の相関を示した。しかし、1985-1994年においては、この相関性は消失していた。牟屡地方を中心とする17市町村における河川・飲料水中のCa,Mg含有量と1989-1994年の平均年間発病率有意な相関性はみられなかった。
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