研究概要 |
今年度はハロン代替消火剤物質である1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CF_3CHCF_3、以下HFP)熱分解産物の毒性について検討し、半数致死濃度(LC_<50>)、急性吸入曝露における生体影響について知見を得た。 <方法>1.LC_<50>の検討:HFPガスの流量を5段階に設定し、発生したHFP熱分解ガスをプラスチックチャンバー内に放出した後、0.1N-NaOH液100ml中に5Lバブリングし、熱分解ガス濃度をフ溶ッ素イオンメーターで測定されるフッ素濃度といて評価した。一群10匹のマウスをチャンバー内においてHFP分解ガスに一時間全身曝露させ、曝露後2週間観察し、それぞれの濃度における死亡率をもとに、HFP熱分解ガスのLC_<50>を算出した。2.急性曝露実験:1と同時に一群5匹のマウスを一時間全身曝露させ、曝露直後に採血、屠殺、および臓器(鼻腔、肺、肝、腎、脾)を採取した。得られた生体試料については血液学的検査、血清生化学的検査・病理組織学的検査を行った。 <結果および考察>1.LC_<50>の検討:HFP分解ガスのLC_<50>(1時間)は463pであった。これはフッ化水素のLC_<50>(1時間・マウス)の500ppmに近い値であった。2.急性曝露実験:血液学的検査において顕著な傾向はみられなかった。血清生化学的検査においては曝露直後の高濃度曝露群において血清カルシウム濃度の有意な低下がみられた。これは、血液中のフッ素イオンがカルシウムイオンと結合し、カルシウムイオンが減少したことによると考えられる。病理組織学的所見は次の通りであった。鼻腔:鼻腔粘膜表層に滲出物と壊死細胞の付着。腔内における好塩基性の遺物の出現。粘液・滲出物の出現。気管:上皮の変性・脱落。肺:中等大以上の大きさの気管支上皮の変性・壊死・腔内への脱落。気管支上皮と基底膜の剥離。肝・腎・脾については所見はみられなかった。これらより、HFP熱分解ガスは呼吸器系に強い影響を及ぼすことが明らかになった。
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