フォルムアルデヒド曝露を行ったマウスに実験的にアレルギー応答を惹起させてアレルギー学的検索を行った。抗原としての卵白アルブミンによる感作経路を昨年の腹腔内投与から現実に近い鼻腔内投与へと変更し、血清中の特異的IgE抗体価を測定し即時型アレルギーへのフォルムアルデヒド曝露の影響の検討を行った。腹腔内投与と異なり、フォルムアルデヒド曝露群で抗体産生が強く抑制された。今年度は、さらに感作段階へのフォルムアルデヒドの影響について検討を加え、local lymph node assayを用いて、マウス耳介背面に即時型アレルギー惹起物質であるトリメリト酸、遅延型アレルギー惹起物質であるオキサゾロンを塗布した5日後に、頚部リンパ節の細胞数および増殖活性を測定した。また、頚部リンパ節組織中のサイトカインmRNAの測定も行った。トリメリト酸塗布によるリンパ節細胞数の増加とリンパ球増殖活性の亢進はフォルムアルデヒド曝露によりさらに促進された。一方、オキサゾロンを塗布を施したマウスでは、フォルムアルデヒド曝露によるさらなる促進は認められなかった。サイトカインmRNAの発現からは即時型あるいは遅延型応答惹起のいずれかへの偏りを示す結果は得られなかった。以上より、昨年得られた結果と同様に、感作段階においてもフォルムアルデヒド曝露マウスで即時型アレルギーよりも遅延型アレルギーの成立が誘導されやすいことがわかった。しかし、即時型アレルギーの症状発現の評価法として血清中特異的IgE抗体価がかならずしも良い指標であったとは言えず、今後の課題とした。また、血清中特異的IgE抗体価が抗原投与経路の違いにより異なる結果が得られた理由についても今後の課題としたい。
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