段階的暗算ペース負荷によって数段階の暗算課題負荷を課した時の複数の生体計測データからメンタルストレスの度合いを定量的に推定する多変量モデルを構成した。多数の生体計測項目のうちで、ストレス負荷量の順序尺度として利用できることが判明した項目は、心拍数、RR変動のLF成分パワーとHF成分パワー、呼吸数、動脈圧受容体反射感受性であった。そこで、これらの変量を説明変量とし、6段階のストレス負荷量をカテゴリカルな従属変量として、重判別分析を行い、6段階のメンタルストレスが評価できる重判別モデルを構成した。そして、メンタルストレスを定量的に判別・評価できるシステムについて、まず研究室内でのインターナルデータで適合度テストを行い、その有効性を確認した。そこで、実際の特殊環境暴露時のメンタルストレス評価にも応用するつもりで、41気圧飽和潜水模擬(ダイバーによる400m潜水を想定した約1カ月にわたる高圧タンク内での生活)での段階的暗算ペース負荷の実施可能性を検討した。しかし、通常の生活環境に直ちに復帰できないような特殊環境でのストレス負荷実験は、被験者の安全を考慮して実施が困難であることが判明した。そこで、宇宙開発や海洋開発で特殊環境に暴露されている人達の上記生体計測データを重判別モデルに当てはめることで、特殊環境暴露時のメンタルストレスの度合いがある程度測れるように改良した。
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