本研究では、まずメンタルストレス負荷のための段階的暗算ペース負荷がノート型パソコンで掛けられるようなシステムを構成し、この負荷法におけるメンタルストレスの負荷レベルと主観的評価値ないしパフォーマンス評価値との関係について検討を加えた。さらに、循環パラメータとして、心電図R-R間隔変動の低周波帯域パワーや高周波帯域パワーおよび圧受容体反射感受性などの循環パラメータに着目し、これらのパラメータを有効に利用することによって、どの程度メンタルストレスの負荷レベルを推定できるかを検討した。健常成人15名の被験者における目的変量(負荷レベル)と説明変量(循環パラメータ)との重相関係数は約0.7で、あまり高い値とは言えないが、この負荷法での負荷レベルがメンタルストレスの順序尺度として利用でき、複数の循環パラメータを有効利用することで負荷レベルをこれからのパラメータの回帰推定モデルから予測可能であることが確かめられた。その後、幾つかの改善策を施して、このメンタルストレス評価システムを完成させた。当初、このシステムを特殊環境におけるメンタルストレス評価に利用することを考えていたが、潜水模擬実験では高圧環境のため、遠心重力負荷実験では狭空間内過重力環境のため、ビ-トごとの連続血圧の正確な測定がなかなかできず、結局、メンタルストレスの推定式が満たされなかった。したがって、特殊環境でのこの回帰推定モデルによるメンタルストレス評価は断念せざるを得なかった。そこで、今後は、さらに推定精度を高める工夫と血圧測定での制約がない特殊環境でのメンタルストレス評価に応用することを考えている。
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