研究概要 |
カルニチンによる脳防御について、特にタウリンとの比較を行いつつ、作用機序、今後の応用の可能性等を論じた(Igisu, Matsuoka, Iryo: J. Occup. Health37 : 75-82, 1995)。 更に、カルニチンの抗けいれん作用について、最も一般的なモデルの一つであるペンチレンテトラゾール(PTZ)誘発けいれんについてマウスを用いて検討した。 その結果、L-カルニチンが、“clonic seizure"及び“tonic seizure"を用量に応じて抑制することを認めた。すなわち、L-カルニチン投与により、観察時間中の発作頻度は明らかに減少し、初発発作までの時間も延長した。たた、“minimal full seizure"に対する効果は明瞭でなかった。 一方、PTZは、脳内エネルギー代謝産物濃度に明らかな変化をもたらした(ATPとクレアチンリン酸減少、ADP、AMP及び乳酸の上昇)が、カルニチンはこれらの変化も抑制した。 スクロース分有溶液投与との比較により、上記効果が、“浸透圧効果"によるものでないことを確認した。 更に、L-カルニチンとD-カルニチンの効果の比較を行った結果、L-型がD-型よりも有効であることを認めた。また、カルニチンアセチルトランスフェラーゼに対し拮抗阻害能力をもつとされるD-型をL-型と同時に投与しても、L-型の効果の明らかな減弱は認められなかったことから、今回認められたカルニチンの効果は、長鎖脂肪酸のミトコンドリア内膜通過とは異なった機構によっている可能性が考えられた。
|