研究概要 |
アデノウイルス感染症は咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、急性出血性膀胱炎、乳幼児嘔吐下痢症の疾患を引き起こし、その病像は多彩である。特に眼科領域や小児における急性下気道炎では、院内感染等の問題もあり、迅速診断が必要とされる。そこでポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を利用した、アデノウイルスDNAの検出とPCR産物による型同定の可能性について検討した。プライマーは、アデノウイルス全型に反応するといわれているヘキソン部位を用いて(Allard,A.et al.:J Clin Microbiol 28,1990)、アデノウイルス1〜8型においてPCR産物を得た。その産物の塩基配列を決定し、その結果、1〜8型のアデノウイルスPCR増幅部位には、異なる制限酵素部位があり、4種類の制限酵素(Hae III,Hpa II,Rsa I,Mae I)を組み合わせることによって、PCR産物の消化断片が各ウイルスによって異なる可能性が示された。このことを角結膜炎院内流行時に採取された13例の検体について応用した。その結果、ウイルス分離陰性かつPCR陽性検体(2検体)においても、ウイルス分離陽性(アデノウイルス8型)と同様の制限酵素解析パターンを示し、原因ウイルスを確認出来る可能性が示された。 また、最近特に増加傾向にあるアデノウイルス7型感染症では、乳幼児の重傷肺炎が問題になっている。この場合、便材料を用いた酵素抗体法による診断が非常に迅速簡便で有用性が高いことが示された。
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