研究概要 |
本調査の目的は,群馬県下の一般住民を対象として,異なる地域やライフスタイルなどが,心やからだの自覚症状や健康診断時の理学的所見・血液生化学所見に,どのような影響を与えているのかを,全数調査を用いて疫学的に解明することである.群馬県北部の1農村と県中央部の1市部の40才から69才の全住民を対象に行った健康に関するアンケート調査(年齢・職業・学歴,現在の健康状態に関する情報,生活習慣や社会的支援等に関する心理・社会的情報,および心身の訴えやストレスを定量的に表す東大式健康調査票(THI)の質問項目など)結果と健康診断情報とのデータリンケージを通して、質問票項目の相互の関連と理学的所見・血液学的所見との関連について分析した. その結果,農村部と市部の住民の健康指標・ライフスタイルを比較すると,1)農村部は血縁によるソーシャルサポートが,市部は地縁によるソーシャルサポートが優位であり,2)農村部は有病率が低く,健診受診率が高く,自覚的健康度も総体的に高かった.また,3)喫煙者群は非喫煙群より呼吸器症状と生活不規則性の訴えが多く,多量飲酒者は少量飲酒者に比べ,消化器症状や身体全般の訴えが多かった.さらに,喫煙の比較でははっきりしなかったのに比べ,飲酒群と非飲酒群の比較では飲酒群の方が各種の精神的な愁訴の訴えが多かった.そして,4)運動習慣のあるものはないものに比べ,各種の心身の訴えが男女ともに低いことがはっきりとした.さらに、5)農村部の調査票結果と健診データ結果との関連を判別分析モデルを用いて解析した結果、例えば、血清コレステロールなどの脂質系の異常群と正常群の判別には、やはり肥満や飲酒が大きく寄与している一方で、肝機能異常群と正常群の判別には肥満度や拡張期血圧の他に、心身の愁訴の訴え易さが同時に関連している可能性が示唆された。
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