研究概要 |
今年度は、水銀が細胞性免疫に及ぼす影響を明らかにする目的で、蛍光燈製造工場に勤務中の水銀暴露歴を有する健康な男子作業者25名(平均年令24才)と免疫系に影響を及ぼす有害物質への暴露が無い25名のリンパ球分画を比較、検討した。 被験者の静脈血を2K-EDTA加採血し、レーザー光線によって励起光を発する蛍光色素fluorescein isothiocyanate(FITC)と結合させた抗Leu-4(CD3)抗体、抗Leu-3a(CD4)抗体、抗Leu-18(CD45RA)抗体及び抗Leu-7(CD57)抗体とPhycoerythrinと結合させた抗Leu-12(CD19)抗体、抗Leu-2a(CD8)抗体、抗Leu-3a(CD4)抗体及び抗Leu-11(CD16)抗体と共にインキュベートした後、フローサイトメーター(FACScan.Becton Dickinson社)で各リンパ球中の百分率を求めた。抹消血中の全リンパ球数は自動血球計算機(SP-VI,Coulter社)で測定した。また各リンパ球分画の百分率との積からリンパ球分画数を算出した。対応のあるt検定により水銀暴露群と対照群の比較を行った。 今回測定したNatural Killer(NK)細胞(CD16+),T細胞(CD4+.CD8+),B細胞(CD19+)のうち、水銀暴露作業者ではCD4+CD45RA+T細胞及び総CD4+T細胞分画数が対照群よりも有意に低かった。この結果から水銀暴露によってリンパ球細胞系のうち、suppressor-inducer機能を有するCD4+CD45RA+T細胞が選択的に影響を受けることが示唆された。
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