栄養所要量とは「健康を保持・増進させるためにはエネルギー及び各栄養素を1日どのくらい摂取するばよいか」を示したものである。しかし厚生省から示されている日本人の栄養所要量は健常者を基準に作成されており、障害者の指標となるものはない。近年、障害者の過剰栄養、特に肥満者の増加が問題となってきており、障害者における適切な栄養所要量の設定が強く望まれている。本研究の直接的な目標は「障害者の実態を十分に考慮した適切なエネルギー栄養所要量はどれくらいか」というものである。今年度は上記目的のために、対象者の体脂肪率を中心とする体組成と、身体活動の客観的な評価方法の検討を行った。前者については近年開発された空気圧式の体密度・体脂肪測定装置“BOD POD"の妥当性を5人の健常者ボランティアによって、従来の水中体重法、インピーダンス法、近赤外線法などとの比較により検討した。また身体活動の評価法として、体動と心拍数をモニターできる“アクティブトレーサー"を採用し、その検討を行った。これらの基礎的検討の結果を踏まえ、茨城県在住の知的障害者(年齢は10代後半〜40代前半)、男女30名を対象に本調査を開始した。本調査では上記方法による体組成、身体活動の評価に加え、速度を変えた歩行と自転車エルゴメーターによる運動負荷を行い、各動作時の酸素摂取量から各動作毎のエネルギー消費量を推定した。また早朝覚醒時にエネルギー消費量の基礎となる基礎代謝量を測定を行った。現在、以上の結果を解析中である。
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