知的障害者のエネルギー代謝の特徴を明らかにするために、男子知的障害者23名の基礎代謝、臥位、座位、立位、分速30m、50m、70m/min歩行時のエネルギーコスト(体重・時間あたり消費量)、最大酸素摂取量及び体組成を測定し、年齢、身長、体重をマッチングさせた健常対照群と比較した。エネルギーコストの測定にはダグラスバッグ法を用いた。体組成測定は、ガス希釈法を用いて行った。体動を評価するために、3次元加速度計を用い、また、主栄養素の血漿指標も測定した。知的障害者の座位、立位、分速30m、50m歩行時のエネルギーコストは、健常対照群に比較して有意に高かったが、2群間の基礎代謝、臥位時エネルギーコストに差はなかった。知的障害者の最大酸素摂取量は、健常対照群に比較して有意に低かった。加速度計によって記録された知的障害者の動きは、健常対照群よりも大きく、知的障害者の座位、立位、分速30m、50m歩行時のエネルギーコストが健常対照群よりも高い理由の一つと考えられた。一方、2群間の体脂肪率及びlean body massに差は認められなかった。知的障害者の血漿総コレステロール、中性脂肪、アルブミン値は健常対照群に比較して有意に低かった。以上から、知的障害者のエネルギー代謝効率は健常対照群よりも悪いことが示唆された。その原因は、知的障害者の日常生活の運動不足のためかもしれない。知的障害者の食事及び運動基準を作成する際には、知的障害者のエネルギー代謝におけるこれらの特徴を考慮すべきである。
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