将来の骨粗鬆症の発症を予防するためには、小児期から骨量を十分に増加させておくことが必要であるが、その根拠となる追跡調査は数少ない。我々は富山県の1小学校の4年生(115人)6年間に渡って追跡し、最終年度の踵骨の骨密度(超音波法)とそれまでのライフスタイル、体格、初潮開始時期、遺伝子型との関連を検討した。各年度毎に男女別に各栄養素摂取量、身長、体重、ロ-レル指数の値によって5群に、また運動量の値によって3群に分類した後、最も多く属した群あるいはそれに準じた群をその個人の代表群とした。また女子は初潮開始時期によって5群に分類した。一元配置分散分析により男子では小5、中2及び代表群の運動量及び体重が、女子では中1、中2、代表群の体重及び小5、中1、中2、代表群のロ-レル指数が骨密度と有意な正の関連を示した。ビタミンD受容体遺伝子中のBsmI及びApaI多型は骨密度と有意な関連を示さなかった。遺伝子を除く他の要因と骨密度との関連を重回帰分析で解析したところ、男子においては運動量と体重がそれぞれ独立に骨密度と正の関連を持ち、女子においては体重及びロ-レル指数が独立に骨密度と正の関連を持っていた。運動量は骨密度の中でも特に超音波伝導速度(SOS)と、また体重・ロ-レル指数は多周波減衰率と関連していたことから、これらの要因は異なったメカニズムで骨の形成に影響を与えていることが考えられた。今回の研究により骨粗鬆症省の予防の観点からも運動の重要性があらためて示されたものとともに、骨密度に関しては体重が多いことや肥満がむしろよい方に働く可能性が示唆され、肥満児にとっての1つの光明となる結果とも言えよう。
|