研究概要 |
愛知県東部の石綿ならびに非石綿繊維を含む岩石を産出する地域における鉱物繊維暴露状況と住民の健康に影響する危険性を評価するために、(1)採石場、農耕地、住宅地での空気中鉱物繊維濃度、(2)住民の剖検肺中の鉱物繊維濃度、(3)住民検診受信者の胸部X線写真上の胸膜肥厚所見を調査した。その結果、(1)メンブランフィルター法により採取した気中粉塵の光学顕微鏡による観察では、操業停止した採石場敷地内は1.2-2.5f/L、200-400m離れた農地は1.8-2.5f/Lであり、日本の一般的な気中石綿濃度値と大差はなかった。分析電子顕微鏡による観察では、石綿としてはクリソタイルとアクチノライト, 非石綿鉱物繊維としては珪酸アルミニウムとタルクなど、現地産出鉱物と同じ繊維が検出された。現在、測定点の増加とともに、電子顕微鏡による繊維の種類別濃度測定を続行中である。 (2)現在産出石綿中、アクチノライト、トレモライトの肺内濃度は、蛇紋岩産出地を含むA市1710人中8人、B町940人中6人に認めた。いずれも蛇紋岩産出地を含まないC村301人では認めなかった。今後、有所見者の居住地、職業歴を調査する予定である。 現時点までの研究結果からみて、広範囲に高濃度石綿暴露があるとは思われないが、限局された地域での一時的な高濃度暴露はありうると思われ、調査を継続中である。
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