神経難病患者の主観的QOLの向上を図るため、その関連要因を明らかにすることを目的として、大阪府内の2か所の保健所管内の神経難病患者(101名)の訪問調査を行った。主観的QOLの測定は、星野らによる神経難病患者QOL評価尺度を用いた。有効回答が得られた85名(後縦靱帯骨化症25名、パーキンソン病24名、脊髄小脳変性症14名、等)を分析対象とした。QOL得点およびQOL評価尺度の因子分析で得られた第1因子「生活充実感」、第2因子「情緒的安定」、第3因子「疾病受容」の各因子得点を従属変数とした重回帰分析を行った。QOL得点に有意の関連がみられた項目は「患者自身病気についての知識を得ようとしているか」「本人の職業の有無」「経済援助者の有無」「家計の余裕」「ADL」「外出頻度」であった。これらの変数のほか、「生活充実感」には「ソーシャルサポート」が有意に関連し、「情緒的安定」には「療養に役立つ情報を家族が得ようとしているか」「患者・医師関係」が有意の関連を示した。保健所における難病患者支援事業では、患者の心理的・社会的側面から状況を把握し、個別援助や集団的援助を通して、本人・家族の疾病管理能力を高め、ソーシャルサポートを強化する支援を行っている。本研究より、患者の主観的QOLを高めるための援助では、患者の医学的治療や直接本人に働きかける支援のみならず、本人を取り巻く環境面の要因にも目を向けていくことが重要であることが示された。
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