研究概要 |
変異原物質に対する感受性を個人レベルにおいて評価する目的から、末梢血中リンパ球における小核頻度の測定を行った。本年度は加齢影響を除外できる同一年齢層(19-24才)の健常男女26名を対象として、自然誘発小核頻度、および小核誘発のメカニズムを異にするコルヒチンとX線により誘発した小核頻度の量反応関係ならびに同一用量を処理した際の小核頻度の分布について検討した。 各変異原による量反応曲線の解析からは小核誘発の閾値(統計学的に有意な小核誘発を認めた最低用量レベル)はコルヒチンにおいて個体差が認められたが、X線においては認められなかった。繰り返し実施した2回の測定値(最大用量での小核頻度)は各個人においてはよく一致するが、被検者全体の分布をみると、いずれの変異原による誘発小核頻度の分布も正規分布に適合する(カイ二乗検定による)ことがわかった。このことから変異原に対する細胞遺伝学的影響(感受性)に個体差が存在することが強く示唆された。 染色体切断(chromosome breaks)型異常を反映するとされる動原体染色陰性の小核と染色体消失(chromosome loss)型異常を反映する動原体陽性小核に分類する目的から、二種の変異原によって誘発された小核の動原体染色をを進めている(動原体染色法についてはその改良法をまとめた:Environ. Mut. Res. Commun.,17:217-221)が、X線では動原体陰性小核が、またコルヒチンでは動原体陽性小核が優位に誘発される傾向を認めているが、個体差との関連を示すのに十分なサンプルが未だ解析されておらず継続中である。
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