変異原物質に対する感受性を個人レベルにおいて評価する目的から、末梢血中リンパ球における小核頻度の測定を行った。本年度は19-80才の健常男女124名に対象集団を拡大し、自然誘発小核頻度、および小核誘発のメカニズムを異にするコルヒチンとX線により誘発した小核頻度の分布について検討した。 各変異原による小核誘発頻度はANOVA検定により個人差が明らかであり、変異原に対する感受性の個体差が示唆された。さらにX線誘発小核頻度とコルヒチン誘発小核頻度の間には有意な相関は認められず、これらの変異原に対する感受性は独立していることが示唆された。対象者の一部に対して、誘発された小核の動原体染色を実施した結果から、染色体切断(chromosome breaks)型異常を反映するとされる動原体染色陰性の小核はX線にdominantに誘発され、染色体消失(chromosome loss)型異常を反映する動原体陽性小核はコルヒチンで誘発されることが判明し、各々のタイプの染色体異常に対する感受性が独立していることが両変異原に対する感受性が独立している理由であると推察された。 現在、X線による小核誘発がラジカルによるものであると考え、小核試験と同時にサンプリングした血清の抗酸化性について各種抗酸化ビタミン濃度と電子スピン共鳴法によるヒドロキシルラジカル捕獲能について測定し、小核頻度との関連について実験を継続中である。
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