「目的」重症心身障害児(者)(以下、重症児と略す)の疫学と予後を研究するために、重症児の死亡状況の分析と生存分析を行った。最終年度では3年間の分析結果、予後に影響を及ぼす要因として影響が強いと思われた「食事の形態(栄養摂取の形)」と「出生時体重」を取り上げ、詳細に検討した。前者は栄養摂取の型が予後にどのような栄養を及ぼすかについて、後者では出生時体重が重症児の発生に如何に関連するかについて検討を行い重症児の悪化予防と発生予防について考察を行った。 「対象・方法」東京都における在宅の重症児のデータに基づいて分析を行った。東京都は1979年2月から在宅の重症児を対象として訪問健診事業を行っている。本研究の対象者は当初から1993年1月までの間に把握された死亡者167例、最終年度生存者523例の計690例である。はじめに中村による重症児チェックリストや身体情報の項目を変数とする多重ロジステック回帰を行った。次に生存分析を行った。生存分析は1979年以降の出生者についてKaplan Meier法、Cox比例ハザードモデルを用いて行った。 「結果」(1)食事の形態では経管群の予後が有意に悪い結果であった。実態調査表I群の14年生存率は43.8%であった。(2)出生時体重の群間に有意の差は見られなかったが、10歳未満では低体重群がより生存率が悪い傾向であった。 「考察」(1)食事の形態は予後を規定する重要な因子である。今後の改善を期待したい。(2)重症児の発生は周産期医療の発達によって減少していると言われているが、一方では一旦、減少傾向であった低出生体重児は近年増加傾向にあり、今後低出生体重後に発生する児の心身障害の予防が重要であると思われる。
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