研究課題/領域番号 |
07670463
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
渡部 美鈴 大阪医科大学, 医学部, 助手 (30084924)
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研究分担者 |
土手 友太郎 大阪医科大学, 医学部, 助手 (10257868)
織田 行雄 大阪医科大学, 医学部, 助手 (80247840)
谷岡 穣 大阪医科大学, 医学部, 助手 (60236685)
河野 公一 大阪医科大学, 医学部, 助教授 (30111016)
吉田 康久 大阪医科大学, 医学部, 教授 (40084834)
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キーワード | 高齢者 / 老人保健施設 / 在宅ケア / 介護意識 |
研究概要 |
大都市近郊で精神病院に付設し、平成6年7月30日に開所した老人保健施設の1年間に入退所した利用者の心身および入退所状況を調べると共に、その介護者の介護意識を入所期間中のアンケート調査より解析した。 当施設の1年間の利用状況は、入所者121名、退所者56名(46%)であった。対象者は、男性40名(33%)、女性81名(67%)、平均年齢は81歳、日常生活自立度判定基準BやCの者53%(国:42%)、軽度以上の痴呆を有する者68%(国:70%)、自力歩行者32%と心身状態が低い者が多かった。世帯構成では独居世帯が40%(国:18%)と最も多く、3世代世帯は35%(国:56%)。利用者の平均実子数は2.7人であった。利用者の保護者の約90%は市内および市内周辺の都市に在住していたが、面会数は週1回程度であった。これらの結果は大都市近郊の本施設の利用者は実子数が比較的多いにもかかわらず独居者が多く、家族交流が少ない群であることを示していた。利用者の入所前の生活場所は家庭からの入所が36%、病院から59%、他の老健から5%、退所した56人の退所先は家庭25%、病院61%、福祉施設14%で、老健が位置づけられている病院から入所し家庭に退所した者は5%(6人)、家庭から入所し家庭に退所した者が6%(7人)いた。入退所状況で、病院から病院へのケースが最も多く、3ケ月以上本施設に在所している者は病院から入所した者が多かった。このことは病院と老健とのいわゆるキャッチボールになっている可能性が危惧される。これらの介護者に利用者の退院後の介護希望場所を訪ねた結果、自宅19%、病院56%、特別養護老人ホーム25%と大部分の者は施設希望であった。介護希望場所に影響を与える因子には、介護者の仕事時間、保健婦指導の有無、痴呆の有無、利用者との続柄などがあげられた。以上の結果から、本施設の利用者は、比較的近くに親族が居住しているけれども、入所前は実子数の多寡にかかわらず独居者が多く、面会などの家族交流が低いことから、退所後の家庭内介護力は確保できにくいことが示唆される。一方、介護者の介護意識としては病院や老人ホームでの生活を期待している。つまり、これらの利用者は心身機能が向上しても自宅退所は厳しい状況にあり、本施設は病院から家庭への中間施設としての役割は低いことが明らかであり、このような高齢者の住処となる収容施設が必要であることを示していた。 これらの結果は第54回公衆衛生学会総会、山形市(平成7年10月)、第66回日本衛生学会、札幌市(平成8年5月)に発表、1年間の現状を老人保健施設の実態調査 第1号として報告書を作成した。
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