研究概要 |
平成7年度においては、DNA損傷応答遺伝子の一つであるRNR3の5'プロモーター領域(-800bp)をβ-ガラクトシダーゼ構造遺伝子(RNR3-lacZ)に連結した後、酵母に導入し、DNA損傷によるRNR3の誘導発現がβ-ガラクトシダーゼの活性として検出できる系を作製した。DNA付加物生成能力を持つ化学物質でもRNR3は誘導され、種々のDNA損傷にたいしてレスポンスすることが判明した。また、ラットチトクロームP4501A1(CYP1A1)を発現させた酵母にRNR3-lacZを導入し、DNA損傷における代謝の関与を検討した結果、本システムではチトクロームP450代謝産物のDNA損傷性も検出可能となった。この結果は、Biochemical Pharmacology 50(10):1695-1699,1995に報告した。 平成8年度においては、申請者らはDNA損傷応答遺伝子であるリボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子(RNR3)の誘導発現メカニズムについて検討した結果、RNR3はupstream repressor sequenceが特異的な結合蛋白因子と相互作用することによって誘導調節されることが明らかになった。これらの結果については、Biochemical and Biophysical Research Communications(222:280-286,1996)に発表した。 平成9年度においては、申請者らはヒト細胞を用いてDNA損傷を検出する系を確立するための基礎的検討として、化学物質曝露による損傷応答遺伝子および修復遺伝子の挙動について実験した結果、DNA損傷を検出する系として、gadd153遺伝子の有用性が確認された。これらの結果については、日本衛生学雑誌52巻p208に発表した。
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