動脈硬化性疾患に血清NAG活性が高いことが報告されており、これを疫学的に証明するために1982年の住民検診において住民の77. 3%を調査し、1080人の受診者において血清NAGを測定した。今回の目的は血清NAGが脳心血管病の初期の指標であり、将来的にその傷害が進展し脳、心血管病の発病につながるのかを疫学的なProspective studyによって検証することである。 今回、われわれは対象者1080名の追跡調査(質問表調査、病院調査、訪問調査)を実施した。現在の調査率は約60%であるが、全死亡は64名であり、このうち脳、心血管病での死亡は9名であった。また、死亡者を含む脳、心血管病発症者は20名であった。発症者の血清NAGの平均値は、153. 1±37. 9(IU/L)であり、非発症者の平均値は127. 3±60. 7(IU/L)と統計学的に有意に発症者で血清NAGの平均値が高かった。すでにわれわれは追跡研究において、血清NAG活性が高値を示した正常血圧者は、将来、高血圧に進展する頻度が高いことを明らかにしたが、今回の現時点での予後調査においても脳、心血管病の死亡、発症に最も影響すると考えられる血圧値を考慮しても、血清NAG活性が高値がであることが有意に関連することを多重ロジスティク回帰分析を用いて検討することとしている。残り約40%の予後調査は現在継続中であり、悉皆調査終了時に分析成績を総合的に評価し、血清NAG活性の意義を検証できるものと考えている。
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