数十種類のシソ科植物(とくにハ-ブ類)の抗HIV作用をin vitroで検討した。各試料を乾燥し粉砕後、種々の有機溶媒で抽出し(水では加熱抽出)、各抽出物を減圧乾燥もしくは凍結乾燥し、MT-4細胞におけるHIVの増殖抑制効果を検討した。その結果、8割程度のシソ科植物に抗HIV活性が認められた。さらに、その活性は水抽出物に強く認められることから、活性成分は比較的極性の高いものと推察された。これらのうち、抗HIV作用を顕著に示した植物はカゴソウ(夏枯草)、アオジソ、バジルシナモン、レモンバーム、グレープフルーツミント、オ-デコロンミント、ウインターセイボリ-等で極めて強い活性(16μg/ml以下の濃度)が認められた。 これらの活性成分の検索法として、シソ科植物の水抽出物をCHP-20等の逆相系のオープンカラムを用い、水・メタノール混液の溶媒系で分画し、次いでゲルろ過する手法で単離を試みた。活性成分の構造決定には未だ至らないが、その本態はフェノール系水酸基をもつタンニンに糖を配した構造をもつ物質であると推察された。すなわち、シソ科植物(とくにハ-ブ類)に共通する特異的な物質が広範囲に分布していることが明らかとなった。 さらに、比較的強い活性の認められたシソ科植物の抽出物について、その作用機序を検討した。各抽出物は、HIVによる巨細胞形成を強く抑制した。このことから、主な作用機序としては、HIVが免疫細胞に結合するのを阻害するものと考えられた。また、HIVの逆転写酵素活性をわずかながら抑制した。さらに、HIVの実験株だけでなく、HIV患者から分離した新鮮分離株の増殖も抑制した。 このように、in vitroではあるが、極めて栽培しやすく、安価な種々のハ-ブ類に強い抗HIV作用を有することが認められたことから、今後、さらに臨床への可能性を検討する必要があるものと思われる。
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