研究概要 |
トランスフェリン(TF)はアルコール依存症患者の生化学指標として重要視されている。しかし、いまだ簡便な検査法は確立されていない。そこで、アルコール依存症患者のTFに特異的に反応する抗体の作成を試みた。TFのアミノ酸配列から次の二つのペプチド(T1; PVLAENYNKSDNC,T2; GHLFGSNVTDCSG)を選び出し、これを合成後、末端をアセチル化したものをMBS法でキャリア蛋白に結合させた。ついでアジュバントとともにウサギおよびニワトリにそれぞれ免疫して抗血清を得た。 その結果,T2をウサギに免疫した時のみ約4万倍の高力価の抗ペプチド抗体が得られたが、その他の組み合わせではいずれも実用的な力価の抗体はできなかった。このことより、抗体の作成には免疫動物の選択が重要であることが明らかとなった。T2抗体を用いた患者および正常の生のTFに対する反応性を免疫ブロット法により分析したところ、共にほとんどバンドが認められなかったので、検出法の検討が必要である。また、この抗体のTFの分解物に対する反応性、他のタンパク質などに対する交差反応、抗体の組成などを検討中である。 このT2抗体中にアルコール依存症患者のTFに特異的な抗体が検出されれば、アルコール依存症診断の有力な手段となることが期待される。
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