研究概要 |
1.短時間虚血後再潅流におけるカルパインによるカルスペクチン分解 虚血心筋障害の非可逆化(梗塞化)のモデルであるラット虚血再潅流心を分画し、ウエスタンブロッティングによりカルスペクチンの分解を調べた。サルコレンマを含む分画で虚血10分後再潅流後に既に分解を認めた。これは、従来報告されているどの蛋白よりも短い虚血経過後の分解であり、15-20分以内の虚血後の障害は可逆的であるという常識を覆す結果である。カルパイン阻害剤は、この分解を抑制するとともに、20分虚血後再潅流時の収縮不全を著明に改善した。カルスペクチンは、サルコレンマと細胞骨格を繋ぎ、細胞のintegrityを保つと思われている。従って、その分解は心筋梗塞化の端緒となるものと思われる。また、分解産物を特異的に認識する抗体を用いた免疫組織切片上で、虚血再潅流後、サルコレンマ上のカルスペクチンの分解が証明された。 2.プロテインキナーゼC(PKC)アイソフォームの短時間虚血後の転移 PKCはホルモン、成長因子等の他、虚血で活性化され、またカルパインがその活性化や分解に関与している証拠がある。PKCには10余種のアイソフォームが発見されたが、各々の機能は未知である。ラット潅流心を用い、5-10分虚血後、α,δ,ε,ζアイソフォームが、核-筋原線維分画や膜分画に異なった様態で転移することを見い出した。カルパイン阻害剤が、転移を抑制する一方、虚血後αアイソフォームのカルパイン分解産物が出現していた。虚血中のPKCの活性化とそれに伴う転移にカルパインが関与している可能性が示された。
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